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【第175回(2019/1/15)】「第二の自然としての建築」

 2019年になって初めての建築家フォーラム第175回では、マウントフジアーキテクツ主宰の原田真宏氏が登壇。表題は、原田氏が自身の手掛ける建築のありようを示すキーワードだ。

 原田氏は文豪ゲーテの言葉を引用し、「市民の要求をかなえ、更にその上、自然の理にもかなっている。いわば”第二の自然”ともういべき建築を目指している」と語った。

 講演では、自身の処女作「XXXX HOUSE」(2003年)から2017年度のJIA(日本建築家協会)日本建築大賞を受賞した「道の駅ましこ」までの主な事例を紹介。”第二の自然”としての建築を追求する姿勢を切り口に、その変遷をたどっていった。

 原田氏の建築家としての出発点、「XXXX HOUSE」の大前提となったのは、150万円という予算だ。建て主の「車を1台買う代わりに陶芸のアトリエを建てたい」という言葉に原田氏はそそられる。150万円というと、建築では厳しい予算だが、車であれば屋根も椅子も空調も備わっている。建築では家具程度にしかならないのはおかしい。「必死になって面白がろうとして取り組んだ」。原田氏はこう振り返る。

 コストを優先させて構造にはコンパネを使った。強度の低い材料を強くするように組み合わせた構造ユニットを考案。ユニットのスリットにガラスをはめ込んで採光を図った。開口部であり、断熱材であり、仕上げにもなる構造ユニットによって予算150万円で、平屋の建築を実現することができた。

 原田氏は「予算が乏しいという社会的な条件を突き詰めた結果、自然科学的に合理的な建築にたどりついた。社会学的な与条件に対して、自然科学的な建築によって解決を図る。このあともそういうことをずっと続けている」と話す。

 今回の幹事である手塚貴晴氏は、一連のマウントフジアーキテクツの仕事について「その作品は実に実直である。きらびやかな形態操作とは無縁と言って良い。流線型も異常に細い構造も存在しない。その一方でその形態を導き出すプロセスに関しては実に饒舌である。隅から隅まで説明しなければいけないという意思が満ちている。その意思が細部まで満ち満ちているが故に、その作品には説明が必要とされない」と評する。

 その代表作ともいえるのが、「道の駅ましこ」だ。栃木県の南側に位置する益子町にとって、外部へ向けての「玄関」ともいうべき施設であり、地元の人にとっては重要な商業インフラでもある。町長からは地域に根付いた存在になることを求められ、「土地から生えてきたような建築にしてほしい」という要望があった。

 設計にあたって原田氏が掲げたコンセプトは「風景でつくり、風景をつくる」ということ。切妻屋根の連続屋根は、周辺の里山に勾配を合わせた。構造の集成材は町有林から切り出した杉でできており、基礎の立ち上がりを覆うのも地元の土だ。形も素材もこの町のもの。外観は周辺の里山に溶け込み、建物内からは大開口から目の前の田園風景が取り込まれている。まさに”第二の自然”としての建築だ。原田氏は「建築と風景が循環している」と表現する。

 「道の駅ましこ」のプレオープンに訪れた地元の人から次のような感想が聞かれたという。「いつも見ている田んぼの風景なのに、この建物内からあらためて見たら、こんなにきれいなところだったんだと気づいた」。変わらない風景が建築によって、より価値のあるものになった。

「それが建築の力であり、この建築がもたらした実り。人と自然と建築のこういうありかたを目指して私は建築に取り組んでいる」。原田氏はこのように締めくくった。

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