レター

第12回AACA賞・第1回芦原義信賞

総評

今年度のAACA賞には、あらたに芦原義信(会長)賞が新設されたこともあって、昨年までの応募作品点数の50%増が目立った現象であった。

AACA賞部門17点、芦原義信賞19点の応募作品の中から、選考委員会で議論の末複数の選考委員による現地審査を経て、最終審査を行い対象作品を絞り込み選出された。

芦原義信賞の趣旨は「優れた創造的環境形成に寄与した未来ある新人」に与えられるというもので、最終審査段階で種々の議論が交わされ受賞作品が決定した。

すでにBCS賞など各種の受賞歴の豊富な建築家よりも、アーティストとのコラボレーションによって、開かれた芸術的環境の創出に貢献した成果を重く見ることになった。

とくにベストセラーズ「街並みの美学」(芦原義信著)のコンセプトである単体よりもとくに街並を意識したような応募作品は少なく、AACA賞の本来の建築家とアーティストとの連携へのアプローチの成果でエントリーしている作品が大半を占めていた。

「未来ある新人」という賞の趣旨に沿って我こそは芦原義信賞に適格という自信がAACA賞へのエントリー数より上廻ったものと思われる。丸の内ビルディングがどのような佇まいで出現するのかは、建築界のみならず日本全国の人から注目されてきた文化現象といってよい。

ひとむかし前、旧丸ビルよりも皇居寄りのお濠端に屹立した東京海上ビルは外装に朱色の煉瓦タイルを纏った格子状のストイックな外観でその姿を現したときは、当然のことだが賛否両論が一般のメディアを賑わし丸の内地域への市民の期待や思い込みの深さを知らされた。

AACA賞受賞作の決定については審査員の一人が東京海上ビルの当時のインパクトと比較して、受賞作の歴史環境を意識した外観デザインの保守性と、数多いアートとのコラボレーションに異議を唱える場面もあったが、この作品に盛り込まれた豊富なコンセプトとアートとのコラボレーションの成果に圧倒的多数の審査員の支持を得て受賞作に選出された経緯がある。AACA賞奨励賞の東京都立つばさ総合高等学校は近ごろの新制度から生まれた数少ない高校のキャンバスとして他の都立高校とは比較にならないゆとりのあるプロジェクトで、特に工事中の400mトラックが完成すれば、今後はおそらく追随を許さぬレベルの施設になる。

とりわけ三人の審査員が現地を訪れて注目したのは、学校建築として豊かな空間が巧みに組合され演出が行届いていることよりも、各フロアーの壁面に施されたウォールグラフィック 「Wisdom on Wall」の提案そのものであった。

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