レター

寒中所感

昨年・WTCビルが「テロ」に遭う以前から、じつは大米帝国の「アメリカ的正義」の絶対化と世界化の傾向が憂慮され、その衝突が「反グローバリズムを生むことになったのは当然の反撥とされる声もあるのだが。

それ故に国連のエリート緒方貞子女史の提唱する「グローカリズム」(グローバルとローカルを兼ね合わせた)のスタンスこそ、まさに至言として注目される所以でもある。それにしてもこの国のパフォーマンスキャビネットの追随対応には、ますます不安が募るばかり。

ところでわが国の建築資格制度についての基本的な考え方も「グローカル」な基盤の上に確立されるべきことは、もはや論議を俟たない。数年前から建築士会連合会の信頼すべスポークスマン藤本昌也氏は、グローバリズムとは一線を画したローカリズムに根ざした「反普遍主義」を提唱し、具体的に開かれた地域主義の実践はとくに富む。もっとメディアは注目されてもよいのでは。

JIAをはじめとする関係四団体は足並みを揃え連帯してこれまでは国際的にはローマ字であいまいに「KENCHIKUSHI」と位置づけられてコンセンサスに至らぬ侭に見送られてきた「建築家の資格制度」を早急に確立し、積極的に行動すべき時機である。

職能団体として何よりも先ず取組むべきは「情報公開」であり、公共建築の発注サイド・自治体の担当者に対して設計者選定に関わる経過・結果の情報を公開し、透明性を図る勇気を喚起することである。

建築家達は個人の枠を超え、後難を恐れず、職能団体として対応することで「情報公開」を求めることが可能となり、これまでの不透明な設計界の沈滞ムードを払拭する契機となることは疑いないし、建築界の構造改革の原点でもある。

2002年1月 元旦

代表幹事  近江 栄

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